君に見せたい景色がある・・。
- Peacemaker 道家
- 6月14日
- 読了時間: 6分
更新日:6月27日
君に見せたい景色がある。 石巻復興支援ツーリング、10年の旅の終着点
2025年6月8日・石巻晴天。
10年間、走り続けた石巻への復興支援ツーリングという旅が、この日、ついに「LAST RUN」を迎えました。この旅に「LAST RUN」の言葉を添えるのは、少しだけ寂しくもあり・・・しかし、確かな充足と深い感謝が、そこにはあります。

「復興支援」と言うと、立派なことのように聞こえるかもしれません。でも、正直に言えば、私たちにできることなんて、たいしたことではなかったんです。
ただ、若いころ私が2年間を過ごした東北・宮城。そして、癒しを求めて走ったあの場所に、何かできないか? と思った。
そんな思いから生まれた、ほんの小さな願い。
「どうせツーリングに行くなら、東北(石巻)へ」
「同じお金を使うなら、被災地で使おう」
それが、この「復興支援ツーリング」の出発点でした。
それでも、その想いに共感してくれた仲間が一人、また一人と集まり、そして、東北で私たちをあたたかく迎えてくれる仲間とも出会えました。
■ 「君に見せたい景色がある。」
このキャッチフレーズを胸に、嵐のような大雨の日も、雷雨の日も、私たちはただひたすらに、あの地を目指して走ってきました。

その“見せたい景色”があった場所。それは、牡鹿半島・コバルトライン。
東北ならではのリアス式海岸線が美しいこの半島は、山の緑と海の青、そして空の蒼が織りなす絶景で、多くのバイク乗りたちの心を魅了し、奪ってきた特別な場所でした。


■ あの日、目の前に広がった“現実”
2014年8月、震災から3年が過ぎた頃。「コバルトラインが復旧した」と聞き、思い出の地を数年ぶりにバイクで訪れました。事実上のこの活動のきっかけになった1回目の訪問。


しかし、私が知っていた港や、毎週のように立ち寄っていた海女小屋はもう姿を消し、港にはひっくり返った堤防、かつて集落があった場所には、瓦礫が片付けられただ高く盛土された更地が延々と広がっていて、道沿いにはプレハブのコンビニと商店。
正直、言葉を失いました。
「復興?……なにも進んでいないじゃない??」
関東に住む私たちにの想像とはかけ離れたそんな現実が、目の前にありました。

■ 「今から」だからこそ、始める
震災から5年が過ぎた2017年9月。世間から“復興支援”という言葉もあまり聞かれなくなった頃に、私たちは「今の形で活動」を始めました。
「今から始める復興支援ツーリング」
「今だから始める復興支援ツーリング」
千葉のバイカーズカフェ「BIGONE」に集う仲間たちとともに、そこから石巻を目指す10年の旅が始まりました。東北のライダーたちもその想いに応えてくれ、地域を超えた新たな絆が生まれました。
■2020年開催 コロナパンデミック。 2020年、新型コロナウイルスが世界を襲い、これまでのような形での実施が難しくなっても、私たちは個別で石巻へと向かい、支援を続けました。東北の仲間たちは、そんな状況でも私たちを快く受け入れてくれました。コロナで荒んでいく人の心、そんな時だからこそ東北のみなさんの優しさが身に染みた・・・そんな年でもありました。
■ 2021年──歌に思いを込めて
感染状況が改善せず相変わらず厳しかった2021年。 開催が危ぶまれる中、私たちは「花は咲く」を練習し、東北へ歌を届けました。
東北の仲間に届けこの思い、バイク乗りが歌う「花は咲く」 その年は実行委員会のスタッフのみでの訪問となりましたが、東北の仲間たちは、やっぱり変わらず、笑顔で迎えてくれました。
気づけばこの旅は、「ありがとう」を伝えるための旅へと変わっていたのです。

■あなたの走りはきっと誰かの役にたつ。
RIDE189TOURING RALLY開催。
2022年、コロナが「5類」に移行し、ようやく長い夜が明けました。
その年、私たちはRIDE189ツーリングラリーを開催。モーターマガジン社の人気雑誌「RIDE」とのタイアップで、児童虐待防止の「189(イチハヤク)」を冠名にした新たな社会貢献プロジェクトが誕生しました。
そして、石巻の復興支援もその一環として実施。千葉と宮城をつなぐ広域支援という形が、ひとつの成果として形になったのです。
■ 変わってしまった風景、変わらなかった心 私が知るコバルトラインの風景はあの震災によって破壊され変わってしまいました・・。
「君に見せたい」と語った美しい港や青い海、そして、空と海の境界が溶けるような蒼い空。
それらは今や高くそびえる防潮堤によって遮られ、景観はすっかり様変わりしました。
コバルトラインから見えていた「景色」は、コンクリートの壁の向こうに消えました。
高く高く築かれた防潮堤が、その景観を遮ってしまったからです。君に見せたかった“あの景色”は、もうほとんどが失われてしまいました。これも復興が進んだ証であり、現実。

■ それでも、君に見せたい景色がある
でも私たちが本当に見せたかったのは、海や空の“風景”だけじゃない。
いつの日かそんなことに気がつきました・・・。
「君と走った仲間たちの姿」
「毎年あたたかく迎えてくれる東北のみなさんの笑顔」
「仲間を思い周りに気遣いながら走るたよりになる優しい背中」
「震災からの歩みと現実」
それら全てが、私たちにとっての
「君に見せたい景色」そう、「君と見たかった景色」。
■ 終着点、そして次の旅へ
石巻を目指しブレずにただただひたすらこの場所を目指して走った10年間の旅は、これで一区切りかもしれません。 でも、この道でつながった仲間と、心に刻まれた景色は、これからも続いていくと信じています。

この10年間、共に走ってくれたすべての仲間に。そして、私たちを迎え入れてくれた東北の皆さんに・・・・ 心から、ありがとう。またあの道で会いましょう。 そう伝えて石巻復興支援ツーリングという冠名の活動は一旦終了します。
たくさんの思い出、たくさんの笑顔、たくさんの優しさ、そして何よりもこの10年間、無事故無違反でこの活動を終えられたことも誇りに思います。ありがとうございました。

最後に
活動の最初から私たちを支え、優しい笑顔でいつも迎えてくれた大先輩
サンファン・ヴィレッジ
元総支配人 故・幸田支配人
そしてこの活動の立ち上げ第1回を全力で支えてくれた
笑顔の使者「テル」
この二人に心から哀悼の意を捧げます。またあの丘の上で。
The Last Run - But Never the End
またあの約束の地で会おう。
■2025年ラストラン石巻復興支援ツーリングギャラリー
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