• Masahiko Yamamoto

スタッフ研修「ライダーのための救護法講座」を実施

バイク事故に特化した救護法研修を開催


令和2年10月24日、一般社団法人ピースメーカー(以下ピースメーカー)は千葉県大多喜町中央公民館に特別な講師の方をお招きして、ツーリングイベントでスタッフを務めるメンバーを対象にした「ライダーのための救護法」というツーリングリーダー研修会を開き、二輪事故における負傷ライダーの救護法を学びました。


ツーリングイベントをより安全に運営するために


ピースメーカーは二輪車のツーリングを通じて様々な社会奉仕活動を行っている団体です。

ツーリングをスポット誘致しながらの町おこし活動も精力的に行っている他、児童虐待防止強化月間の11月に県・市の公式PR活動オレンジバイカーズツーリングラリーを、またクリスマスにはサンタライダーズとして児童養護施設との交流ツーリングも行うなどのソーシャルツーリングを通年数多く企画施行しています。

やはりバイクを愉しむにはライダー個々の責任において安全に留意されることが絶対ですが、多くのライダーと共にツーリングの可能性を深く広めていく団体として、可能な限り万が一に備えることは義務であると考え、ファーストエイドを学ぶ機会を設けることにいたしました。

講師はバイク事故救護のスペシャリスト

今回講師をお勤めいただきましたのは、研修タイトルでもある著書「ライダーのための救護法」(山と渓谷社)を著された桑田幸二さん。

桑田幸二さんは山岳救助隊で修練を積まれ、人命救助にかけては様々な知識と技能をお持ちで、バイクレース団体MCFAJのレスキュー隊長として、過去20年間にわたり様々なレース事故の救護にあたられていた方です。

それゆえ、講義内容は消防署や公民館などで一般に習うことのできる救護法講座とは異なるもの。

バイク事故の現場に遭遇し、今まさに路上で倒れているライダーを、救急車到着までの間にライダーをどう扱って救護するのか?

など、バイク事故救護に特化した実践的な内容になっていることが特長です。


今回は午前中3時間の座学を経て、午後はその知識を基に3時間の実践を行うという計6時間の講座。

日曜日の午前9時から行われたこの講座には、日ごろからピースメーカーの活動趣旨にご賛同いただいている株式会社カドヤのスタッフ様もご参加になり、ライダーの「まさか」への対応知識を一緒に学ばれました。

この稿では当日の内容と、参加スタッフの様子などをお伝えしていきます。

※ご注意

この稿は当日の講座の内容をお伝えすることを目的とし、救護の実践方法をお伝えするものではありません。

本文では講座の専門性を紹介する目的で救護の方法をお伝えしていますが、文章表現による内容の解釈の仕方によっては、かえって事態を悪化させる恐れもあるため、修練のない実践は危険です。

実践をされる前には必ず実技講習を受けてください。

「ライダーのための救護法」はこういう講座

桑田さんの講座では、転倒ライダー発見からの初動作法が体系的に整理されているので、一つ一つをしっかりと学ぶことができます。

最初に教えていただくのが

事故との遭遇から救急隊到着までの間、必要となる処置の内容をチャート化した次の内容。


この表ではまず、事故の発生あるいは要救護ライダーに遭遇した時点から必要となる処置を

1. 「あ」安全確認

2. 「い」意識確認

3. 「こ」呼吸確認

4. 「大すき」大出血の有無を確認して処置する

という4つの項目に分類し、その頭文字から「あいこ大すき」という形で、いざというときにも慌てず思い出せるように工夫されています。

講座はこの表の内容を詳しく説明しながら進行する内容でしたので、ここからしばらくその一部を皆さんと一緒に見ていくことにしましょう。


あ-①「どこを打ったのかよく見ること。」


桑田さんは転倒の瞬間を目撃した場合、心の中で極力1・2・3とカウントするようにしているのだそうです。

これは倒れゆくライダーの身体が当たった場所ひとつひとつを印象として焼き付けるための心掛け。



時速にして32㎞/h以上のでの転倒、6m以上の落下では人はその衝撃を吸収しきれないものなので、倒れているバイクと転倒ライダーとの位置関係を把握することも処置内容を判断するうえで大変重要です。そのため、発生直後の写真をとって置くことができれば、救急隊・警察への事情説明をにスムースにできるのだそうです。

あ-② 「その場所は安全か?」(二次事故防止)

バイク事故の場合、絶対に避けならないのが

  • 転倒したライダーが後続車に轢かれてしまうこと

  • 救護に向かった人が負傷すること

という2点。

そのため転倒者救護においては、他の交通にその場所の事故発生を早期に認知してもらい、援護の手を募ることが「はじめの一歩」になります。


当日はヘルメットに被せるタイプの三角板や発煙筒を常備しているというスタッフもいて、参加意識の高さをうかがい知ることができました。

転倒者の背後から声をかけてはいけない

移動が必要な場合、転倒者をいかに安全な場所に避難させる方法は意識の有無によっても異なりますが、初めに注意しなければいけないのが、転倒者に声をかける角度です。

倒れている人を見ればすぐに「大丈夫か?!」と、声をかけたくなるのが人の常です。

しかし転倒者は事故直後、頸椎の損傷に気づいていない場合が多いにもかかわらず、声をかけられた方向に振り向こうとしてしまうため、意識の有無がはっきりわから転倒者にむやみに声をかけることが命取りになってしまうことがあるのだそうです。

そのため、転倒者へのアプローチは極力転倒者が顔を向けている方向から行う必要があることを学びました。

あ-④転倒者の移動が必要な時

基本的に、その場の安全が確保されているなら、転倒者をその場から動かさないことが基本になるそうです。

しかしながら、道路上に意識なく横たわっている場合など、自力で移動できない転倒者を速やかに安全な位置に移動する必要があることも少なくありません。

講座ではこうした場面への対応方を次のように学びました。

発見者が転倒者を一人でその場から移動させる場合


恐らく山中の峠道などでは、発見者一人で転倒ライダーを移動させなければならない場合もあると思います。

その際は、左のようにライダーの着衣の方の下を掴んで移動させます。




A、両手は背中の下でウエアを握り込む手のかたちに

B、両腕の間にヘルメットを載せて頭部を保持します。


救護者の腕を転倒者との間に両腕を肘まで差し込み、背中で上記の形をつくりながら、ヘルメットを救護者の両腕にのせてライダーの背中を少し浮かせます。




写真は2019年2月別会場にて撮影

そして上の写真のように腰を落として、ライダーの背中を少し浮かせた空間に救護者の膝を入れて、

転倒者の片腕を腹の上に置き、援助者の腕を転倒者の両脇から入れて腹に置いた腕の両端を掴みます。

さらに写真のように、救護者の頭を使って、垂らした腕の側で転倒者の頭を支えながら、かかとを支点にして救護者が後ろに倒れ込むようにして後方へ移動します。


このとき、頸椎損傷の恐れもあるので、移動を終えたら、転倒者の頭をゆっくりと下すのが肝心。

この方法であれば、救護者が一人の時であって転倒者が自分の体重の2倍であっても、後ろに引くことができるのだそうです。

今回、午後の実践講習では新型コロナウィルス感染防止の観点から、桑田さんがこの日のためにご用意されたマネキンの「あいこちゃん」を使って実践を行いました。




第三者に協力してもらえる場合

現場で第三者の協力が得られる場合は次のようにしていきます。


救護者は転倒者の顔の向きとは反対側から救護にあたり、








顔・肩・腰をひねったり動揺させたりしないように注意しながら、これらを同時に起こします。





向きを変えたら、頭は特に揺らさないよう慎重におろします。








その後の移動については図のように、


上半身側を担当する人(a)が、一人で救護するときと同じ方法で転倒者の腕をつかみ、転倒ライダーの背中を(a)の腹の上にのせて膝立ちになって、

下半身側を担当する人(b)が立膝で腰を落として転倒者の両足をまとめて抱え、上体を支える援護者とともに同時に立ち上がります。

この方であれば、素早く長い距離を移動できるのだそうです。


い-④「意識の確認」(処置上の注意とヘルメットの脱がせ方まで)

119番を周囲に要請する際の注意


こうして周囲の安全を確保できたら、転倒者の容態を観察しながら救急車到着までの間の必要な処置に移行します。

そこで救急車を要請するのですが、現場はとにかく緊迫し、「救急」という言葉が周囲の不安を大きくするため、周囲の人に要請をお願いする場合は「救急車」ではなく、「119番通報願います!」と言った方が良いと桑田さんはおっしゃっていました。

また、この後の措置がわからなくても、消防指令室は救急車到着まで、求めれば逐次必要なファーストエイドの方法を指示してくれるのだそうです。

い-⑤ 転倒者の手当と観察 (動揺への配慮)

今回の講座では、転倒者のけがや搬送だけでなく、転倒ライダーのメンタルへの配慮が重要であることも学びました。

例えば呼びかけに反応がない転倒者であっても、その耳ははっきりと聞こえている場合が多く、

• 「バイクがぐしゃぐしゃだ。」

• 「これはもう助からない。」

といった言葉を聞くと、転倒者の転倒者の不安を拡大させ、実際に転倒者の心拍や血流を乱し事態を悪化させる恐れがあるため、桑田さんは次のような配慮をして欲しいと仰います。

  1. 転倒者に意識がある場合には、やじ馬を遠ざけるか救護に参加してもらう。

  2. 転倒し、大破したバイクを転倒者に見せない。

  3. 助けが来ることを告げ、励まし続ける。

また、頭を打っている場合には、いきなり意識を失う場合もあるので、救護者は安静処置中も絶対に転倒者から目を離してはいけないとのことでした。


もしも自分が遭遇して対処することになったら…?

緊迫した現場を想像しながらの講座だけに、いつも笑顔ではしゃいでいるメンバーも終始真剣な表情。

開催に当たってはメンバーに検温とマスクを義務付け、会場は籍の間隔をあけ、窓を開けて常時換気を行いながら感染防止に配慮しました。


い-⑥ ヘルメットはいつ、どうやって脱がせる?

頸椎損傷の疑いがある、あるいは救護者が一人なおかつ、その場の安全が確保されているという状況では無理に動かさず、119番通報要請ののち、ヘルメットを抑えて声をかけ続け、転倒者を動かさない方が良いそうです。

逆に、へルメットを脱がせた方が良いのは、

  • 意識がない。

  • 呼吸がないか、呼吸が不規則。

  • 口の周りに吐しゃ物がある。

  • 鼻や口から出血がある。

この4点のどれかがある時。

しかし、理由は後述しますが救護者が一人の時はこれができません。

ヘルメットの脱がせ方

第三者が転倒ライダーのヘルメットを安全に脱がせるのは実に大変なことで、頸椎を傷めないよう基本的に救護者が2人以上居なければならず、しかもジェット型と、フルフェイス型では脱がせ方が大きく違うということを教わりました。 (※基本的に救護者が一人しかいないときには行ってはいけない作業です。)

ジェットタイプのヘルメットを脱がせる方法



➀ 一人が顎と首の後ろをしっかりと支え、頭が動かないようにします。


② そして、もう一人が顎紐を外してヘルメットのふちを掴んで左右に広げ、耳が出るまでゆっくりと広げます。