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塞がれた心たちに、届けオレンジの光

更新日:2021年11月23日

隠された心たちへの想い ~私たちが走る理由~


日本には、暴虐に嘆いた太陽の神が、岩戸の陰に隠れ、以来様々な禍(まが)がことごとに起きた、という神話があります。

(日本書紀第七段、天の岩戸)

遥か数千年を経た現代。

度重なる震災や風雨災害といった未曽有の禍(わざわい)に加え、ことさらこの2年近くのコロナ禍に塞がれた生活が、そんな古代の神話を思い出させるところです。


現代の“見えざる”重い岩戸

ようやくこの秋、緊急事態宣言も解除となり、世間の閉塞的な空気に希望の光がさしかける状況になってきました。

しかしそれでも、依然その光を見るに至らず、見えざる重い岩戸の奥に未だ封じ込められている小さな心たちがあります。

本来であれば保護者の愛情に育まれながら日々キラキラと太陽のごとく輝くはずの子どもたちの笑顔。

児童虐待という闇の中で今この瞬間もそれは、身近な保護者から昼夜を問わない心身への暴力に苛まれているのです。

その数は増加の一途をたどり、今年ついに過去最高の20万5千件越え…。

不幸にして命を奪われる虐待死事件も年間58件発生しており、あろうことか1週間に1人の子どもが命を落としている状況です。


被虐待児にとってのステイホーム

下の表は、今年厚生労働省が発表した令和2年度の児童相談所での児童虐待相談対応件数の推移(速報値)。

ご覧のように児童相談所が扱う児童虐待の相談件数は、平成29年度より爆発的な増加を見せ、昨年度はコロナ前の令和元年度より、11,249件の増加を見るに至りました。

コロナ禍においては、就労の不安定化やそれに起因する生活の変化など、虐待行為をエスカレートさせる要因も増え、外部の人と触れる機会が減少する状況は同時に、加虐待の事実の隠匿を容易にしてしまった可能性もあります。

それゆえ、既に虐待が常態化した家庭の被虐待児たちにとって「ステイホーム」は、地獄の日々であった可能性も否めません。

さらに、表中の数字はあくまでも、不幸中の幸いにして虐待(およびその疑い)に児童相談所が介入することができた数。

この数の外で未だ誰にも発見されることなく、保護者からの暴虐に悲しみの声もかき消されている小さな命たちがこの数字のほか無数に存在しているのです。


189(イチハヤク)の社会的な周知のために

将来を照らすはずの子どもたちの笑顔を蓋いでいる児童虐待は、

「現代の見えざる由々しき岩戸」。

日本書紀では、岩戸に隠れてしまった太陽の神もやがて、八百万の神女神のに励まされながら再びその姿を現したとされていますが、自らの意思に反して固く閉ざされ、自尊心を阻害された被虐待児たちとって児童虐待という岩戸の扉はあまりにも重く、再びその笑顔を岩戸の外で輝かせるのは容易なことではありません。

この「見えざる岩戸」にわずかでも隙間をつくるのが、社会の周知と協力。

その為の具対策となるのが児童虐待緊急通報ダイアル「189(イチハヤク)」の周知活用を促す啓もう活動です。

一人でも多くの子どもの表情に笑顔の光を灯すため、189の啓もうしながら、バイクを愛する多くの仲間とともに走り続けているのが、私たちオレンジライダーズです。


コロナになんか負けられない!

令和3年(2021年)11月7日(日)、今年もまた、私たち一般社団法人Peacemaker(ピースメーカー)は、バイクツーリングを通じて「189(イチハヤク)」の啓もう活動を行う「オレンジバイカーズ活動」を行いました。

毎年11月の児童虐待防止推進月間に、全国各地で展開されている「オレンジリボン運動」。千葉県では私たちの主催するこのオレンジバイカーズが、県・市のご後援の元、児童虐待防止推進の公式な広報活動の役を担っています。

この活動も、平成28年(2016年)の開始から数えて今回で6回目。

おかげさまで、児童虐待防止を掲げるオレンジ色のビブスを身に着けた私たちのバイクの一団に「子どもたちのためにガンバレー!」と沿道から手を振って声をかけてくださる地元の方々の姿も見受けられるようになってきました。

本来であれば今回は、一般からもより多くのライダーたちを集め、各々の機動力を活かしながら、例年以上に広範な「ツーリングラリー」として開催するはずでしたが、コロナ禍のため、大規模な開催は来年に延期。

昨年と同様今回も、参加者をスタッフだけの少人数に絞った極小規模な開催を余儀なくされました



しかし、「たとえどんな形になろうとも、この活動を絶対にやり抜きたい!」という思いは例年以上に強く、”岩戸”に隠された子どもたちに「光」をとどけるために、私たちは少数精鋭ながら、精いっぱい活動に臨みました。


全ては子どもたちのために

私たちPeacemakerの本拠地であるCafé Club Bigoneに集まったスタッフたち。

スタッフの中には朝4時起きで氷点下の宮城県からはるばる参加したメンバーの姿もあり、都内・近県からの参加したスタッフは、彼の姿に「眠いとか、寒いとか、遠いとか言ってられない。」と、勇気をもらい、気合を新たにしていました。

(右が宮城から颯爽と登場のIさん、千葉のイベントではほぼ皆勤賞で、頭が下がります。)

そうして顔ぶれがそろい、話に花を咲かせる和やかな雰囲気の中、一日の予定や注意事項などを確認すると、皆の表情は次第に引き締まっていきます。


出発前には

Run for kids!

の合言。

少数精鋭ながら熱い思いのオレンジバイカーズが、今年もいよいよ走り出しました。


町も企業も想いを一つに

最初に向かったのは、いすみ鉄道本社のある同社線の大多喜駅。

こちらでは、日頃から私たちの活動にご理解・ご協力いただいている飯島勝美大多喜町長、そしてイベントの共催などでお世話になっている、いすみ鉄道の経営企画室長の斎藤様のお二人に「児童虐待防止啓蒙グッズ※」を手渡す贈呈式を行いました。

飯島勝美大多喜町長(左)・いすみ鉄道 経営企画室長 斎藤様(その右隣り)

※ここで手渡されたグッズは、町内の公共施設やいすみ鉄道の各駅で配布され、地域の児童虐待防止推進に役立てられます。

飯島町長・いすみ鉄道齋藤様も一緒に、全員でRun for kids!

町ぐるみで、児童虐待を包括していきます。


活動に感じた手ごたえ

そんな大多喜駅を後にして次に私たちが向かったのは、千葉の観光スポットの玄関口となる木更津東IC近くの道の駅うまくたの里。

玄関口のマスコット「おナッツ」が、今年も我々のロゴとともに「児童虐待防止」のオレンジのタスキをかけてお出迎えです。

啓蒙活動ではご来場中の皆様に児童虐待防止啓もうグッズを手渡すのですが、緊急事態宣言が明けはしたものの、「安心・安全」とための対策が欠かせません。

そこで今回は、配布員を日ごろ飲食店の衛生職に従事するスタッフに限り、消毒用アルコールの使用や、マスクの着用はもちろんのこと、ディスポーザブル手袋を着用するなど、感染拡大防止策を講じた形での啓蒙活動となりました。

また、今年市民の皆さんに手渡すグッズには、児童虐待緊急通報番号189(イチハヤク)の啓もうに加え、里親制度についてのリーフレットのほか、DV(ドメスティックバイオレンス)防止、オレンジリボンとシンボルパープルリボン(DV防止のシンボルカラー)があしらわれた千葉県のマスコットキャラクター「チーバ君」ワッペンなどが入っているのが特長。

例年よりも内容が濃いものになっていることで、それらを配布する私たちも、いつも以上の責任感を感じます。


「児童虐待防止の活動でこちらをお渡ししていまーす!」

声をおかけすると、私たちの呼びかけに立ち止まって内容について傾聴してくださる方や、

「そういう番号(189)」があるのねぇ、これは今大事よねぇ。」

など、関心を示される方々も多数お見受けすることができました。

この数年、凄惨な虐待によって幼い命が奪われる事件の報道が後を絶たないなかで、市民の方々の関心も高く、この場所のために用意したグッズは短時間のうちに配布完了。

わずかな時間ではありましたが、多くの市民の皆様の反応にしっかりとした手ごたえに、「一方通行」ではない広報活動ができたのではないかと思います。


市民の方々に支えられたうまくたの里を後にして、ここからはちょっとしたパレードラン。

対向車などに手を振りながら、目的地の千葉ポートタワーを目指します。


悲しみを超え“はらっぱ隊”が今年も合流

昨年の千葉ポートタワー、ここで私たちとで合流したもう一団のオレンジライダー達がいました。

彼らは埼玉県八潮市にある「ライダーズカフェはらっぱ」の常連さんたちで、我々の間の通称は「はらっぱ隊」。

今年もはらっぱ隊は、児童虐待への憂いを胸に、私たちの活動に参加してくれました。

児童虐待防止のオレンジビブスを身に着けて、千葉県で最西北にある関宿町に向かい、凄惨な虐待死事件のあった野田市でもパレード走行を実施。

その後は柏市→八千代市→千葉県庁前と国道16号線を南下しながら千葉ポートタワーに向かったのちに我々と合流してくれました。

実は、昨年はらっぱ隊として参加したメンバーの一人がその翌日、歩行中の事故により他界してしまい、今回はその悲しみを胸に秘めての参加。

その方は子どもが大好きな方で、沿道の子どもたちが喜ぶようにと、ぬいぐるみなどをたくさんバイクにつけて参加していたのですが…。

今回はメンバーがそのうちの1つをもって、彼の想いと共に走っていたのでした。


今年は“チーバ君”も参加

千葉港にそびえる千葉ポートタワー日本夜景遺産にも認定されている高さ125.15mのランドマークで、季節ごとのライトアップは県の内外から注目を集めています。

今回は小さなお子さんをお連れのファミリーも多く、昨年より賑わいの戻った印象の千葉ポートタワー前。

ここでの啓蒙活動には、千葉県のマスコットキャラクター「チーバ君」も参加してくれました。

登場するや否や、居合わせた親子にあっという間に囲まれるチーバ君。

スタッフはチーバ君と一緒に「189(イチハヤク)と覚えてください。」

とお伝えしながら、啓蒙グッズを手渡していきました。

チーバくんと一緒に多くの方々に広報することができ、最初のうまくたの里同様、配布されたパンフレットにじっと見入る人や、スタッフの目を見て説明を聞いてくださる方の姿も数多く、こちらでも市民の皆さんの児童虐待防止への関心の高まりが感じられました。


オレンジの光に託す願い

『コロナ禍でバイクの機動力を活かした広報力が制限を受ける中でも、できるだけ広範の市民の皆様に、児童虐待に苛まれている子どもたちに意識を傾けていただく機会を作りたい。』

その想いを、例年ご後援をいただいている県・市の行政の方々をはじめ、社会福祉協議会・千葉県児童福祉協議会様の方々が共有していただき、オレンジライダーズ活動の新しい形として実施したのが千葉ポートタワーをオレンジ色に染める

「ORANGE TOWER Project」です。

このプロジェクトは、昨年に引き続き今回で2回目。

この光がもっともっと多くの方々に児童虐待緊急通報ダイアル189(イチハヤク)の番号を知ったいただく機会となり、虐待からの救出につながるなることを願ってやみません。


もっとたくさんの光を届けるために

受け止めてほしい、この光の願い

オレンジタワーは、今なお発見されることもなく、街のどこかにひっそりと暮らす被虐待児たちに照らすオレンジの光。

私たちが身に着けて走るオレンジ色のビブスはこの光の分身です。

ただ、虐待の岩戸に隠された子どもたちから見てこの光は、おそらく数億光年かなたの恒星のように、弱く小さいものに過ぎないのかもしれません。

『ならば、その光の数を集めて、夜空を照らす星々のよう敷き詰めて、児童虐待抑止につながる「道しるべ」にしよう!』

私たちはそう考えました。


「光」を散りばめる方法

その具体的な方法として実施したのが、令和元年(2019年)に開催した「2019千葉オレンジバイカーズツーリングラリー」です。

当初、11月3日(文化の日)の短日に開催していたオレンジバイカーズでしたが、この方式であれば、開催を単日に限る必要もなくなり、一定期間の中でより多くのライダーが自分の都合に合わせてエントリーをし、広範に設置したチェックポイントを巡るツーリングをすることで、より安全に「児童虐待防止」のオレンジビブスを着たライダーを、房総半島中に散りばめることが継続的にできるわけです。


オレンジ色の流れ星たち

くしくも、令和元年(2019年)は、房総半島が9・10月と立て続けに台風や暴風雨災害といった大きな禍(わざわい)に見舞われた年でした。

これを憂慮して「2019千葉オレンジバイカーズツーリングラリー」では、これまでの児童福祉へのサポートに加え、房総半島の観光資源の魅力訴求で傷ついた観光スポットの復興支援もその趣旨に加えた形で開催することにしました。

結果、100名以上のオレンジのビブスをまとったライダーたちが、房総半島の広範な地域で児童虐待の啓もう活動を展開し、ささやかながら地元観光資源復興のお手伝いにもなったことが、私たちの「バイクツーリングによる社会奉仕活動」の新たな一歩となりました。

ただ、ツーリングラリー元年となった令和元年(2019年)は、あくまでこの方式の「試走」という位置づけの開催。

11月の1か月間をまるまる開催期間とした令和2年(2020年)の「本開催」を心待ちにしていましたが、コロナ禍に阻まれる状況がその後2年も続くことになろうとは、誰しもが想像できないことでした。

しかしこの間も私たちは、縮んだバネは必ず伸びるものだと信じ、さらに大きな効果をもたらす「バイクによる社会貢献活動」を構想し続けていたのです。


バイクで”オレンジの流星群”になろう

先述の通り、千葉で行う我々のオレンジバイカーズ活動には、はるばる宮城から駆けつけてくれるライダーもいます。

実は、彼らの地元宮城には、震災で肉親を失った1,104人もの震災孤児たちがいるのです。※ さらに、大規模な災害で保護者の就労状況や生活環境変化したことが児童虐待や家庭内暴力の増加を招くことにもなり、その状況は今日にも尾を引く忌々しき問題となっています。

参照元;宮城県「東日本大震災みやぎこども育英募金 ※(震災時大学生含む・令和2年3月31日現在)


そこに胸を痛めてきた彼らは現在、地元でPeacemaker 宮城支部を立ち上げ、地元の行政や企業の方々に後援を求めながら、宮城県を中心とした東北地方で私たちと同じオレンジバイカーズ活動を行う準備を着々と進めています。

「更に広範に、もっともっとオレンジの光をとどけたい」

そんな東北・千葉の私たちの想いに共鳴し、サポートを引き受けてくださったのが、大正12年創刊という月刊オートバイ誌の発刊元モーターマガジン社様でした。


実は今回のオレンジライダーズ活動は、本来であればモーターマガジン社様の強力なバックアップの元、千葉だけでなく宮城も含めた壮大なツーリングラリーとして開催する予定で、

残念ながら一旦コロナに道を譲ることにはなったのですが、私たちはあきらめません。


2022年春。

これまでのすべてをリベンジする、

RIDE189 ツーリングラリー」を、東北・千葉においてモーターマガジン社様と共に開催します。


そのキックオフは震災11年目の3月11日(金)の宮城(サンファンヴィレッジ)で、期間は11月13日(日)までの約8か月間。

これは、これまで千葉県内で行っていたツーリングラリーを宮城でも行うもので、

コロナ禍に傷んだ観光資源の復興と、年間を通した広範な児童虐待防止推進活動にも貢献する、壮大で新しいソーシャルツーリングラリーで、既にエントリーの受付も始まっています。

参加ライダーはオレンジ色の流れ星、多数の参加が流星群となって「見えざる岩戸」に塞がれた子どもたちの表情に光を届けることに繋がります。

皆様のご支援、ご参加を心よりお待ち申し上げております。

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