それでもサンタは走り続ける
- Masahiko Yamamoto
- 2025年12月24日
- 読了時間: 12分
更新日:2025年12月28日
2025年第17回サンタライダー旭の物語。

クリスマス・イブを10日後に控えた12月14日(日)、バイクで千葉県内の児童養護施設等を訪問し、子どもたちと交流する「サンタライダーズ」が開催された。2009年から毎年絶えることなく続き、今や施設の子どもたちのみならず、町の人々からも親しまれるこのイベントも、今年で17回目を迎える。
天気予報は猫の目のように
例年、このレポートは「晴天に恵まれ…」で始まる。しかし当日は朝から冷たい雨。強い雨や降雪予報に加え、「晴れ間が差す」という予報も猫の目のように変わり、一時はサンタライダーズ史上初の「中止」も現実味を帯びた。
定まらない天気予報に、主催者としてもさんざん頭をかきむしることとなったのだが、最終判断の時点で、気象庁の予報に残っていた「お昼には晴れ間がさす」の一文に望みをかけ、開催を決意する。
すべては昨年子どもたちに告げた「また来るよ」という約束を何とか果すためだ。
とはいえ、「全工程で降雨」という状況は17年目にして初めて。
安全を最優先に、今年のサンタライダーズは異例尽くしの開催となった。
本物のサンタクロース
運営委員会はSNSを通じ、参加者が自宅を出発する早朝に、こうアナウンスした。
「無理と判断される場合は、無理をせずご辞退いただいて大丈夫です。」
それでも冬の冷たい雨の中、千葉ポートタワー前には各地から続々とライダーたちが集まってきた。

本来、サンタライダーズでは家を出た瞬間からサンタクロースとして参加するのがルールだが、今回は安全を優先し、レインウェアでの走行を解禁。
そのため、見た目には“サンタ集団”とは言いがたいが、その胸の内には子どもたちの笑顔を思う熱い心が燃えている。走行前ミーティングも、今年は青空ではなくテントの下。

強まる雨音を背景に、代表・道家が口を開いた。
「サンタライダーズもはじめのころは、偽善だとかマスターベーションだとか、そんな矢のように降ってくる中傷をはねのけてきました。私たちは、いつも待っていてくれる子どもたちに笑顔を灯すことだけを考えて、ここまで17年間走り続けてきたんです。私たちは正真正銘のサンタクロースです。それ故、雨だからサンタが来ないなんてわけにはいかないんですよ!今回は苦行になってしまいますが、それでもこうして集まってきてくださった方々の思いに感謝します。」

その言葉が、サンタの魂に炎を灯し、各々の表情が引き締まる。
今回は千葉のFM局BAYFMから、活動を応援してくださっているDJ KOUSAKUさんとTSUBASAさんが初めて同行。

出発前には、我々のポリシーである「RUN FOR KIDS!」を全員で唱和し、士気を高めた。

今回はTSUBASAさんの発声で声を合わせた。
異例尽くしのサンタライダーズ
サンタライダーズには、毎年変わらぬ基本ルールがある。
子どもの夢を壊さぬよう、家を出てから帰宅するまでサンタ服を着用し、着替える姿は見せないこと。
千葉ポートタワーを出発し、全員でポートタワーに戻ってくること。

(昨年の訪問より)
しかし今年は、17年で初めて「終日雨」が想定されたため、臨時ルールが用意された。
走行中はレインウェア着用可。サンタ服は施設最寄りの駐車場や道の駅で着替え可。
昼食時点で雨がやまない場合は、ポートタワーに戻らず昼食場所で解散可。
自身の技量や体力に不安がある場合は、事前に共有した緊急連絡先に連絡のうえ離脱可。
安全を最優先にした上で、今年もサンタたちは子どもたちのもとへ走り出した。

いつもの風景は幻想の中に
今回サンタたちが向かうのは、いすみ方面の児童養護施設と乳児院の計3施設、旭方面の児童養護施設1施設、そして成田方面の児童養護施設1施設という計5施設だ。
当初のエントリーは約70台以上だったが、事前のアナウンスによる辞退者も多く、最終的にいすみ・旭合わせて約45名のサンタが、分岐点となる野呂パーキングエリアを目指すこととなった。

いつもなら師走らしい風の中、サンタ姿のライダーが街の人々に手を振り、笑顔で応えてもらえる。

しかし今日は違う。そんな光景はまるで『マッチ売りの少女』の一場面のように、記憶の中に浮かんでは消えていくのだ。
まずは寒さに耐え、子どもたちのために元気は最後まで温存しよう。
それでも、心の中にそっと灯した炎だけを頼りに、サンタたちはひたすら走り続けた。
野呂パーキングエリアに到着すると、寒さで縮み上がったサンタたちが一斉にトイレへ駆け込む。

トイレはカッパ姿のサンタで満員。そんな光景に顔を見合わせ、思わず笑いがこぼれる。
サンタたちのテンションもどこか異例だが、それもまた、互いの気持ちを温め合う大切な時間だった。
談笑も束の間、ここからは3班に分かれてそれぞれの施設へ。旭方面に向かうサンタは計8名。降りしきる雨に抗いながら、子どもたちの待つ施設を目指した。
いざ旭へ――例え試されようとも
一度は小雨になりかけた雨も、走り出せば再び「待ってました」とばかりに打ち付けてくる。高速道路を降りて街に入っても、人影はほとんどない。
もとより、晴れていてもこの地域は、都市部より人通りははるかに少ない。

都市部では近年、この時期にサンタコスプレのパレードを楽しむバイクイベントも各地で開催されているが、氷雨の中、人影もない田舎道をひたすら走り続けるサンタが他にあるだろうか?
恐らくこの氷雨はそれを試す試金石なのだろう。
出発前、全員で声を合わせた「RUN FOR KIDS!」。
試練の意味を問われるならば、それこそが答えであり、”正真正銘のサンタ”たる所以なのだともはやかるく悟りをひらきながら走る。
子どもたちは覚えていた
やがて旭のサンタたちは、施設の近くまで到着した。
訪問先の児童養護施設には、様々な事情で家庭を離れて暮らす2〜18歳の子どもたちがいる。まして小さな子どもたちの中には、“サンタクロース”という存在を純粋に信じている子も多いはずだ。
カッパ姿ではそんな子どもたちをがっかりさせてしまう。
ここで一度レインウェアを脱ぎ、いよいよサンタに“変身”することにした。
我々がサンタに変身するや否や、それをあざ笑うかのように、再び雨が強く降り出した。
もはや笑うしかない状況。意を決して出発すると、程なくして施設に到着した。
いつもなら園庭にバイクを並べ、子どもたちがバイクをとっかえひっかえしながら大人たちを品定めする。

バイクをコミュニケーションツールにして、お気に入りのサンタを見つけて遊ぶ──それが子どもたちの楽しみ方だ。
しかし今年、その楽しみは雨に奪われた。
それでもバイクの音を聞きつけた子どもたちが、講堂の中から笑顔で覗き込んでくる。

職員の方々が、濡れたままでも入れるよう床一面に敷物を敷き、「お浸し」のようになったサンタたちを迎え入れてくれた。

待っていてくれた子どもたちにご挨拶。法人から施設へ寄付金を手渡し、プレゼントを配り始めた。この日は"何故か?"トナカイが大人気で、トナカイが配るプレゼント箱は瞬く間に空になった。
こうしてプレゼントを配り終え、施設を後にしようとした時、子どもたちから声が上がる。
「去年のワンちゃんに会いたい!」
昨年の訪問で、サンタ衣装のワンコを連れてきていたことを、子どもたちは覚えていてくれたのだ。サンタ犬が登場すると、わっと子どもたちの輪ができて、少しの温もりと笑顔を交歓した。

時間にして約30分の訪問。
今回はやむを得ず、講堂でのプレゼント贈呈のみとなったが、それでも子どもたちと共に暖かなひとときを過ごすことができた。
子どもたちと職員の皆さんに見送られながら、サンタたちは手を振って施設を後にした。

バイクでの交流ができなかった分、「また来るよ」「元気でいてな」。その言葉には、いつも以上に重みが感じられた。
受け継がれた思い――成田のサンタ
例年は成田の施設へも班を編成して訪問するのだが、今年は外出行事と重なり、子どもたちに会うことは叶わなかった。
それでも「サンタは必ずやってくる」という約束を守るため、数名の代表が車で施設を訪問し、施設長にプレゼントを手渡すことになった。

成田のスタッフによれば、今年から着任した新しい施設長は、前任の施設長の思いをしっかりと引き継ぎ、変わらぬ歓迎ムードでサンタたちを迎えてくださったという。
施設長からは
「今年も子どもたちは楽しみにしていましたが、予定が合わず残念がっていました。来年こそはぜひ、子どもたちに会いに来てください。」
と温かいお声かけをいただいたそうだ。
たとえ会えなかったとしても、毎年の訪問を心待ちにしている子どもたちがいる。
そのことを改めて実感し、ここにはいない子どもたちの温かさの感じられた成田の訪問となった。
いたずらな空模様
そのころ、旭のサンタたちはミッションを終え、昼食をとるべく近くの道の駅へ向かっていた、
なんということだろう・・・・・
道の駅に到着するや否や雨がやみ、からかうように空は雲間から青空をのぞかせているではないか。
「やれやれ」とレインウエアと水の滴るサンタ服を脱ぎつつ、レストランを探すと、なんとリニューアルのため休業中の看板が…。
「サンタクロースも散々苦労するだ」などと、誰からともなく笑いが漏れる。
仕方なく、近くの喫茶店に移動しようと準備を始めると、またもや雨が降り出して「どこまで試されるだろう」と笑い合った。
近くのコメダ珈琲で生気を取り戻し、やっと落ち着いて今日の訪問を振り返ることができた。
先述の通り、昼食を終えた時点で天候の回復が見込めない場合は、その場で離脱OKとなる。しかしその場での離脱者はなく、旭のサンタたちはひとまず野呂パーキングエリアを目指し、再度空の様子をうかがうことにした。
例年であれば野呂パーキングエリアで各方面のライダーが再び合流し、千葉ポートタワーを目指すのだが、今回は旭のサンタが渋滞に巻き込まれたのに加え、いすみのサンタが早めにポートタワーへ出発していたため、合流は叶わない。

どこまでも厳しい状況が続く今年のサンタライダーズ。
サンタたちはもはや、「次は何が来るのか?」という冗談すら笑ってしまうほど、妙なテンションで走っていた。
サンタは千葉の風物詩
ようやく旭のサンタたちが千葉ポートタワーに到着。


その頃はすでに、いすみ。成田のサンタたちはすでにKOUSAKUさんと共に千葉ポートタワー周辺の清掃を行う「まるごみ」の活動を終えるところだった。
千葉ポートタワーは毎年、イルミネーションで巨大なクリスマスツリーに変身する。
その点灯を待つ間、サンタたちは道行く親子連れにお菓子を配ったり、写真撮影に応じたりと、最後までサンタクロースとしての務めを果たすのだ。
そうして何組かの市民の方々からのそうした声にこたえていたが、今年は障害者の方々を引率して訪れていた施設の方から、嬉しい声がけをいただいた。
「うちのスタッフにバイクに乗る者がいまして、毎年バイクのサンタが来るというので、ホームページで日程を調べてみんなを連れて見に来たんです。」
それを聞いた道家も感激し、早速一緒に記念撮影。

いつの間にか、我々はこの地域の風物詩になっていることを知らされた。
楽しみに待っていてくださる方がいるということは、サンタ冥利に尽きる光栄だ。
そうしてついに千葉ポートタワーがクリスマスツリーとして点灯される。

今年のサンタライダーズのミッションはこのようにして、さまざまな苦難の果てに完遂された。
命の限り走り続けよう
「来年もまた来るぞ」。
これまで子どもたちとそう約束し、それを果たしてきた。しかし、その約束を果たせないまま空に召されたサンタもいれば、この日だけはと重い病を乗り越えて参加したサンタもいる。
代表の道家はこう語る。

「若い時はそんなことは考えもしなかったが、今となってつくづく思う。『我々はあと何回バイクに乗れるのだろう?そしてもしかしてそれが残り僅かだったとしても、私たちの轍にどれだけの幸せを刻み込めるのだろう?』
来年もきっと、みんなで唱和する「RUN FOR KIDS!」。
その言葉の重みは、これからも増し続けていくに違いない。
本稿では旭町方面に向かったサンタライダーズの様子をお届けしました。 同日、野呂パーキングから分岐したいすみ市方面のサンタたちには、ドラマチックな出来事が待っていたようです。
その様子も是非、下記のリンクからお楽しみください。
↓↓↓
2025年第17回サンタライダーご協力・協賛 ご寄付・協賛を頂いた企業様
株式会社ism 住宅事業部 様
株式会社ism Art事業部 様
株式会社 Neo 様
一般社団法人Peacemaker
ご寄付を頂いた活動協力金はすべて 訪問した児童福祉施設の後援会費として寄付をさせて頂きました。
食事やお菓子袋詰めなどの場所提供協力
・Club BIGONE 大多喜風の村本店
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スペシャルサンクス
・DJ KOSAKUさん サンタライダー開催の告知などのご協力と今回は参加ありがとうございます!

























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