• Masahiko Yamamoto

バイクで拓く子どもたちの未来 サンタライダーサマーキャンプが創るもの



バイクの本領は「善」である

バイクといえば悲しいかな、事故や暴走族など、とかくマイナスイメージが付きまとうものです。

しかし、バイクの本領と言うのはそういったものではなく、人の情緒を豊かにし、様々な形で人と人とをつなぐツールであること。

それが、単なる乗り物の枠を超えたバイクの素晴らしさであり、事実わたしたちは、これまでもバイクを通してたくさんの人々との絆を結んできました。



例えば世の中には、「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがありますよね、たまにこれを「カゼオケ」なんて言ったりもします。

風が吹くことと桶屋が儲かることというのは一見縁遠いのですが、実はちゃんとしたロジックでつながっている。

これはそういうということを言うんですよね。

では「ライダーが集まれば、児童養護施設の子どもたちの自立につながる」と言ったらどうでしょう。

バイク乗りが集まることと、児童養護施設の子どもたちの自立?

この異なる2つの結びつきを、にわかに理解できる人は少ないと思います。

その間をつなぐロジックを創っていこうというのが、サンタライダーサマーキャンプの活動。

今回はその主催団体、バイクで社会奉仕活動を行っている「一般社団法人Peacemaker」の活動をレポートしていきます。


如月(2月)のサンタ、そのわけは?

一般社団法人Peacemakerは2007年から12年間にわたり、千葉県内の児童養護施設にサンタクロースとして訪問・交流を行う「サンタライダーズ」の活動を続けている団体。


その他にもPeacemakerでは、震災被災地復興支援ツーリングや、児童虐待防止啓発ツーリングなど、バイクによる社会貢献活動を積極的に行っています。

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そんな彼らが、2020年2月15日、千葉県大多喜町にあるライダーズカフェ「風の村Club BigOne」に隣接するキャンプ場で、第2回目となる

「サンタライダーサマーキャンプ」

を開催しました。

「え、2月にサマーキャンプ?」

そう思いますよね。

実はこのキャンプ、当初は2019年の8月に行われる予定だったキャンプだったのですが、千葉県にも大きな被害をもたらした台風で延期になったのち、度重なる風水害のために、中止となっていたものなのです。



子どもたちと未来を創りたい

児童虐待をはじめ、様々な理由で自らの家庭で育つことができなかった子どもたち。



それゆえ、大人への不信から心を開くことを得意としない子も少なくない中、


2018年に行われた第一回目では、大人も子どもも一緒になって大いに遊び、子どもたちの表情にたくさんの笑顔を灯すことができました。


←2018年の第一回 サンタライダーサマーキャンプでの様子


「必ずまたやるからな!」

そう約束した次の夏は、自然の猛威よって無残に打ち砕かれてしまったわけですが、年を超えた2月に開催は子どもたちに、

「どうせ大人はそんなもんさ」

と思わせてはいけないというライダーたちの意地でもありました。

ただ、そんな意地以上にこの時期の開催に主催者の心を動かしたのは、

「施設を去る前に、どうしてもあのサマーキャンプに参加したい、中止なんて残念過ぎる」

という施設退所を控えた子どもの声。

実は児童養護施設の子どもたちが施設で暮らすことができるのは、法律によって18歳までと定められていて、その後は各々自立していかなければならないことになっているのです。

このキャンプの参加対象は施設に暮らす中高生。

キャンプの目的はよくある慰問のようなものではなく、彼らの自立を支援することを主眼に置いたものになっています。

また、バイクを愛好する人々に中には、様々な地域の様々な職種の方がいるがいて、中には企業を経営する方も少なからずいらっしゃるものです。

そこで一般社団法人Peacemakerは、

『単なる人手不足の穴埋めではなく、本気で彼ら彼女らを自分の会社の中で育てていきたい!』

と思う大人をこのキャンプに招き、子どもたちにとってもこのキャンプが、

『あの人のところで働きたい!』

と信頼の門を開けるような場にしたいと考えているわけです。

2018年サンタライダーキャンプの夜↑

こうして子どもたちと大人が活動を共にしながら心の交流を深め、施設退所後の自立先を開拓していこうというのが、このサンタライダーサマーキャンプ最大の目的。

つまり「ライダーが集まれば、児童養護施設の子どもたちの自立につながる」というカゼオケは、こういうロジックで結びつくわけですね。


楽しみの中に消えていく距離感

本来は前回(2018年)同様、子どもと大人が一泊二日の活動を共にしながら行う予定だったのですが、今回は規模を縮小して1日限りのデイキャンプとして行うことになりました。

基本的にPeacemakerのイベントは、ライダーズカフェ「風の村Club BigOne」が常連さんたちの有志スタッフと一緒になって造り上げる手作りのイベント。

まずは幾つかの造作を一緒に楽しみながら、子どもたちと心の距離を近づけていきます。

心の窓を開けた木工クラフト

最初に行ったのは、あらかじめ用意した材料を基に造る木工クラフトのドリンクホルダー造り。

こんな風に木工で、カップの台座を造っていくのですが、簡単ながら、やすりのかけ方や焼き込みの長さによって仕上がりが変わるので、子どもたちそれぞれの性格も出る造作だったり。

そこがなかなか面白いところです。


←完成するとこんな感じに。



集まった当初はちょと馴染みにくそうにしていた子もいましたが、

聞き上手・話し上手なボランティアスタッフが積極的に声をかけていたので、彼女たちも徐々に興味を深めてみんなの輪の中に入ることができました。

このコーナーのリーダーを務めたのは木工職人のライダー。

「ココってこういう感じでいいの?」

「そうそう、もう少しそこを磨くともっと良くなる、あ、そうそう、その調子!」

励まし上手の木工リーダーで、

「うぉー、凄く上手にできた、いいねぇ」

というと、ちょっとした達成感に、みんな本当にうれしそう。



すっかりリーダーになじんだ子もいて、木工コーナーが終わって彼がちょっと席を立っていると…。

「あれ、ねぇねぇ〇〇さんはどこ?」

と彼の姿を後追いするほどになっていました。


「難しい」≒「楽しい」を知ったミサンガ作り


木工の次は組みひもクラフトのミサンガ作り。

こちらのコーナーはアウトドアやレクリエーションの知恵があるライダーがスタッフとして担当。

できてくると大体こんな感じです。⇒


手順を踏めば着々とできてくるはずのミサンガですが…。

「あれ、これどうなってんの?」

と、なかなかコツをつかめない子もいれば、

「あ~、そういうことなんだ」

と形にしていく子もあり、そういう子に触発されながら、

「よし、俺もやるぞ」

と幾人かの子が連鎖的に奮起するという具合。

『ちょっと難しい、けど頑張ったらできそう。』

幾つかの工程を経るうちこの加減の良さが、



子どもたちを夢中にして、どんどん笑顔にしていくのでした。


バイクが「自信の種」になった瞬間

会場は「風の村Club BigOne」に隣接するキャンプ場。

そして我々はバイク乗り。

私たちライダーは危険をコントロール下に置くことで、他では得られない豊かな感性を養えることを知っています。

他では味わえないバイクならではの楽しさ。

子どもたちとそれを共有するために、広い私有地でバイク体験を行いました。



エンジンがかからない!


日ごろは当然、バイクに触る機会のない子どもたちに、

「これがアクセルで、ここがキックスターター」

と、バイクのイロハから伝えていくのですが、


「えいっ!えいっ! あれ?これ本当にエンジンかかるの?」

と、初めてのキックスターターに息を切らす子どもたち。

旧式のバイクであるのも手伝って、言葉で教わってもなかなかその通りにエンジンはかかってくれません。